Qualia Howdy?

人間です.すべて嘘です.

木下闇

眠れないので少し書いてから横になる

 

通夜に,葬儀に,相続に,と半月ほど右往左往して息を吐く暇もなかったからか気分が滅入ることもなかった.

二月になって行政関連の手続きがある程度終わると時間にも余裕が出てきて,記憶を考えを巡らせることも多くなってくる.一昨日の夜なんか記憶を辿ることを辞めてしまうと頭の中で殺めたような気がしてしまったので想い出を辿り切れなくなるまで家の周りを歩き続けていた.

 

こじんまりとした家族葬には不相応な量の花や電報が届いていた.家族と接する母の姿しか知らなかったのだなと思うと同時に自己犠牲を厭わない気丈な人間だったのだなと思ったりした.

僕は親の葬儀で泣けなかったことを負い目に感じていたのだけど,後から話を聞くと終始泣いていたらしい.そういうものなのかもしれない.

 

家族はみんな人間関係が苦手だと思い込んでいたけれど,厄介な親族関係や面倒な町内会を円滑に進めていてくれたのが母だったことに居なくなってから気が付いた.僕の人生はあとからひどく後悔することが多い.

 

良かったことは一緒に年を越せたこと.最後に僕の手料理を食べてくれたこと.家族全員で看取れたこと.良いことを絞り出さないとやってられない.

 

父や弟へのグリーフケアも考えなければいけない.みんな素直じゃないから強がって普通に過ごしているけれど,いつ鬱になってしまってもおかしくない.何とかしなければ.

 

そういえば夜伽の日,棺桶の中に手紙を入れた.たしか母への手紙は僕の二十歳の誕生日以来で,下書きも何もなく書き進めたから何を書いたのか覚えていない.便箋三枚分くらい感謝と謝罪を並べた気がする.親だということに甘んじて苦労しかかけていないから.

 

そう,そのときから綺麗な字をかけるようになりたいなと思うようになった.小さい頃に母と習字教室へ行った記憶がある.どうやら三日坊主だったらしく,母は僕の字が汚いこと,それを直そうとしないことを気にかけていた.

手始めに少し上等なノートでも買って,毎日の日記を手書きで書いていこうかなと思っているけれど,続けられる自信がない.

 

親が亡くなっても変われない自分が嫌だし,親が亡くなるまで変わろうとしなかった自分も嫌で困っている.

 

もう少しだけ毎日が忙しくあってほしい.回想に溺れるのはまだ先で良いから.