自宅で過ごす最後の夜,僕は母の隣で寝ている.
肉体はそこにあるのに,どうしようもなく悲しい.
柔らかい微笑を浮かべたその顔は,もう苦しみに歪むことも,哀しみに涙を流すことも,声を出して笑うこともなくて,あらゆるものから解放されたかのようにみえる.
父が声をあげて泣くのをはじめてみた.
その隣で僕は「0」で止まったパルスメータを眺めているしかなかった.皆が寝静まったあとにこうして一人,母のそばで泣いている.
いつまでも大人になりたい子供であること,母には見抜かれていたんだろうな.
お母さんは一人で頑張りすぎだよ.
本当にありがとう,あとは任せて.